 |
計測を待つ上野氏のRIDLEY(やらせ) |
本章は、ロードバイクを作製するにあたって必要となる、“図面”を書き起こすための“採寸”について述べている。(ちょっと堅いな)
世に存在するプロダクト(工業製品)には、必ず“図面”が存在する。一品ものについては例外があるかもしれないし、現物合わせということも実際にはあるけれど、少なくともベースになる寸法、もしくは寸法を導くためのノウハウが存在しているはずである。自転車についてはモノの本によると、『ヨーロッパでは“きちんと図面を起こす国”と、“ビルダーの感性(ノウハウ)で寸法を決める国”に分かれており、日本はきちんと図面を起こす方が主流である』とあった。しかし、つよぽ師匠の調べによると、どうやら実態は違うらしい(シティサイクルも含めた“絶対台数”で考えるならば、図面を起こす方が多いのかもしれないが...)では、今回のプロジェクトは、どのような方法で進められたのか?それは「今乗ってるロードバイクを測って、その寸法から図面を引き、ロードバイクをつくる」という方法だった。
パナソニックのPOSや、アンカーのオーダーシステムを利用したことがある人は、身体の各部位を計測して......という方法を思い浮かべるのではないだろうか。確かに、身体の各部を測って、理想的な寸法を導きだす方法(※余談①参照)もあるにはある。しかし、その方法で導き出した寸法が本当に正しいのだろうか。なにせこちらは素人である。検証する方法も経験もないのだ。また、一口にロードバイクと言っても、その使用目的は個々人によって違うだろう。バリバリのポジションが正解とは限らない。なにより、慣れ親しんだポジションを急激に変えるのもどうか?という問題もある(※余談②参照)。
そもそも自転車という乗り物、ある程度ポジションは変えられる構造になっているのだ。ならば、ひとまず現行のセッティングに合わせて作り、後は微調整で自分の身体に合わせるという方法が、今回のプロジェクトにはピッタリくるのではないか。また、自分の自転車の現状を測定した上で、明らかに「んんっ?」という場合には、個別に相談して、調整すれば良いのだ。そのための自作なんだし。
ということで、ツヨポ師匠から下った指令は「以下の数値(下記画像の赤字部分)を測ってくるのだ!」というものである。その数、私の記憶とメモに間違いがなければ5ヶ所。
 |
測るのは5カ所だけ!? |
5ヶ所だけの寸法で、自転車が設計出来るものなのだろうか?結論を言うと、問題無くできる。言いたい事は色々あるかもしれないが、最終的に形になったのだから、できるのだ。詳細は別項で述べるが、そもそも今回のプロジェクト、使えるラグに制限があるので、細かい数値を希望しても、そもそも実現不可能という事情があった。また今回は、ヘッド角とシートチューブ角を73°前後で設定したので、これだけで設計ができてしまうもなのだ。そんなこんなで、計測の上、つよぽ師匠に送りつけたのがこれ(下記)である。ちなみに、青の数字はメーカーのカタログから拾った数値で、設計寸法ではない。
 |
うえノン、リドレーから採寸 |
さてさて、この寸法から、どんな図面が出来上がるのだろうか?
余談①
実は私、大学生の頃に自転車の人間工学に関する研究室で、データ採取とその整理という、ちょっと変わったアルバイトをやっていた。その傍らで、人体の寸法
から自転車の各サイズを決定するノウハウの調査、というのも実施していた。大学ノート数冊分のノウハウ通りにエルゴメーターのポジションを設定、乗り込んで数値を計測してみると、なるほど結果は良好であった。しかしそのポジションで実際に皆が走れるかというと、厳しいのも事実。そりゃそうだ、バリバリのロー
ド乗りのポジションが導けるノウハウなのであって、「サドルにまたがって足裏がベタベタに着く」ポジションが正だった時代、そのポジションに理解を求めるのは無理があったのだろう。
余談②
かなり昔のサイスポだったと思いますが、あるビルダーさんのインタビューが掲載されていました。名前は失念しましたが、インタビューを要約するとこんな感じでした。
「十年以上も上体が立った状態で、しかも前乗りに慣れた人に、理想的なロードのポジションでフレームを作っても、乗っていて楽しくないし、何より身体を痛めてしまう可能性もある。であれば、現在のポジションを少し理想に近づける方向でフレームを作れるのがフルオーダーの魅力なんだけど......でも、自転車をちょっとカジッた人がそのフレームをみたら、『あれ、なんでそんな寸法で作らされちゃったの? ●●●(ビルダーの名前)も全然分かってねぇなぁ』っていう評判になっちゃうんだよね」
......なるほどねぇ(苦笑)