2011年8月25日木曜日

リキスツールを考察してみる


1965年に渡辺力氏がデザイン・設計された、
『リキスツール』を自作・考察してみました。
結論から言うと

「段ボールの切り口が表に出てこない造形は素晴らしい」

ということに尽きると思います。

個人的に段ボールをインテリアの素材として使用する場合、
以下問題点が挙げられると私は考えています。

1)長期間の使用に対する耐久性
2)水(水分)に対する耐久性
3)構造上の切り口の処理

1)については、フランク・O・ゲーリー氏が回答を出している通り、
複合素材化して解消するのがベストではないでしょうか?
2)が難しいところで、方法は幾通りもあるのですが、
残念なことに段ボールの持つリサイクル性であるとか、
環境に優しいというイメージを損ねる方法が大半で、
なかなか解決は難しいかな?という印象があります。
3)については、このリキスツールが、
一つの解答を出してくれた、そんな印象を持っています。

何故そんなに切り口を気にするかというと、
段ボール業界の方はご存知かと思いますが、
段ボールの切り口で皮膚を切ると、
かなりエグい切れ方をしてくれます。
木材・鉄・プラスチック等ならば、
エッジを丸めるという方法で解決を図れますが、
段ボールではその方法がとれません。

ということで、
インテリアで段ボールを使用するならば、
切り口は可能な限り表に出すべきではない、
というのが私の持論です。

題材に取り上げたリキスツールは、
それを完璧に近い形で具体化しています。
巧みな設計で切り口を全て内包し、
大変興味深い構造となっています。
そのため、若干組立て難い部分も見受けられますが、
何度も解体・組立てを繰り返すものではないので、
特に問題はないでしょう。

確かに耐久性はフランク・O・ゲーリー氏の手による
『Wiggle Side Chair』より劣るかもしれませんが、
構造としてみた場合、
こちらの方がより興味深いものがあります。


なお「4つのスツールで象の体重を支えられる」
というキャッチコピーですが、
これは検証が非常に難しい問題です。

それには理由があります。
段ボールは通常3~5枚の原紙を貼合して製造します。
が、同じ原紙を使用して段ボールを製造したとしても、
貼合するメーカーが違えば、
段ボールの強度は大きく違ってくるのです。

また現在と1965年当時では、
古紙品質の影響等で紙質も大きく違うため、
正確な強度の検証は非常に難しいのです。

※注:段ボール業界でない人にも分かりやすい様、
かなりハショッて説明しています。

なお、本家リキスツールは再販を重ねる間に、
耐荷重の表記は落ちる方向で変化しています。
これは日本の段原紙の紙質低下傾向と一致しており、
スツールの耐荷重が落ちるのは当然と言えます。

ユーザーに対して常に正確な商品情報を提示したい、
そんな渡辺力氏の姿勢が垣間見えるように思えました。